東京人の夏の富士山 登山 2019

夜の富士山山頂は真夏でも真冬の世界です

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「頭を雲の上に出し・・・富士は日本一の山♪」

日本人なら富士山は一生に一度は登ってみたい山ではないでしょうか。ところが、誰もが登りたいと思うこの山がご存じの通り日本一高い山であり、その山頂の標高は気軽に行くにはちょっと難有りな山でもあるのです。

気をつけてくださいね。今や五合目(中腹)までは車で行けるのが当たり前になっていますが、そのことは、本来は麓(ふもと)から五合目までの登山経験で養われるべき体力や装備、知識や経験を積むことなく省略してしまう結果になったようで、素人同様の登山者が、普段着で、中腹から登山を始められるという結果をもたらしています。しかし、手軽に非日常が味わえるようになった点は便利になったと思いますが、一方で富士山の怖さはそんな人間事情とは関係なく今でも現役で存在しているのです。

私が富士登山を始めて2度目か3度目だったか。半そで・短パン・ビーチサンダルで夜中の11時の山頂に到着した登山者と出会ったことがあります。無謀です。

富士山山頂は夜になると真夏でも凍て付く真冬の世界になります。 東京では座っているだけで汗がタラタラ滴り落ちるような熱帯夜でも、夜の富士山山頂は極寒の世界。その証拠に、富士山火口には8月になっても溶け切らない雪が残っています。

 
富士山火口に残る雪。左は7月下旬、右は8月下旬。右上は富士山測候所。

「今年はこれだけ暑いから、手袋や防寒着は要らないんじゃないかな?」

東京の常識に染まるとどうしてもそう考えてしまいます。登山となると背負う荷物はできるだけ少なくしたいと考えるわけで、私自身いつもそれで騙され、現地で後悔します。それくらい下界と富士山頂とは世界が、常識が違うんです。持ち物を準備する際に少しでも普段の生活環境の常識で考えると、その分、山頂で後悔することになります。

ちなみに、富士山は標高 3776m。つまり約 4km。たった 4km上空へのぼっただけで真夏が極寒の世界に変わってしまうんですね。富士登山をすると我々がいかに薄い大気の層の中に住んでいるのか、普段の生活がいかに人によって快適に造られたものかを実感します。

この登山者は夜中の11時台に私しか居ない山頂に到着。その姿を見て、私は度肝を抜かれました。まるで南極の氷の上でベースキャンプを設立していたところ、浮き輪を持った水着の人が現れたような気分でした。

その出で立ちで頂上まで登ってきた体力には脱帽ですが、彼はその後、日の出までの約5時間をどこでどう過ごしたのか、見事、日の出の時刻まで耐えて迎えて下山していきました。いえ、「なんだ、なんとかなるんじゃないか」 などとは思わないでください。無理なことを無理矢理やったのです。ずっと一緒にいたわけではないのでわかりませんが、きっと周囲の誰かに援助してもらったんだと思います。2009年夏に数年振りに登頂しましたが、やっぱり夜中の富士山山頂は短パン・Tシャツ・ビーチサンダルで数時間を過ごせるような環境ではありません。風があったこともあり、完全装備でもガタガタふるえながら日の出の時刻を待ちました。無風でも厳しいと思います(※当年には遭難者が出ています)。

あの寒い寒い山頂であれだけの時間を丸まって過ごした(?)彼の根性には脱帽するのですが、軽装備登山の無謀さを確信しています。その後、彼から手紙をもらい、その後の体験を知ることができました。 もともとは麓の湖に遊びに来たんだそうです。ところが、富士山がきれいに見えたので登ってきたんだそうです。確かにあの時、私が登る前には下界から富士山がきれいに見えました。

日の出の時刻を過ぎて下山した時はサンダルの鼻緒が切れて大変な思いをしたそうです。 富士山の下山道は “砂走り” と呼ばれ、数ミリから数センチの溶岩質の小石で出来ており、急な下り坂のため、一歩踏み出す度にザッザと大きく進みます。当然ながらブレーキをかけながらの歩き下山となり、踏み出した足が砂利の中に埋まったり、勢い余って滑って転んだりする光景がしょっちゅう見られます。更に、こういった坂道がクネクネと九十九折り(つづらおり)しながら延々数時間続くのです。よって富士登山に使う履物には、

  1. 底に厚みとクッション性がある。
  2. 小石が中に入らないような踝(くるぶし)まで隠れるもの(靴または足袋)。

必要最低限の性能と言えます。スニーカーは登りはいけなくもありませんが、下りでは中に小石が入るでしょうし、靴底が剥がれてしまってテープを巻いている風景を何度か見た事があります。ちなみに、登山道では7合目から岩場になるので、

  1. 靴底の柔らかいもの

が適していると私は思っています。(≫地下足袋で夏の富士山 登山 体験記

登っている最中は初めは暑くて汗を拭き拭き登りますが、高度が上がるにつれ涼しくなり、丁度よくなってきます。

「登山」 という激しい運動をしているので寒さが丁度よく、涼しく感じるのでしょう。しかしそれは運動して体が発熱しているから調度いいのであって、ひとたび歩みを止めれば体は序々に冷え、段々と寒さを感じ、震えるようになります。噴火口内部に残る雪は、そこがなかなか雪が溶け切らない気温であることを意味します。

富士山に限った話ではなく、登山には、

は最低限絶対必要でしょう。加えて、夜中の富士山山頂で日の出までの数時間を待つ場合は厚手のフリース等の防寒着は必需品で、モッコモコな寝袋があったら比較的快適に過ごせるといった感じ。

体温保持の為に山頂で日の出までの数時間をマラソンや運動して待つ訳にはいきません。暗いしデコボコだし、坂だし、そんなスペース無いし、それ以前に頂上までの登山で既にヘトヘトに疲れてるし、気圧の差からくる高山病で頭痛いし、そんなことする体力も余裕もありません。ほぼ全ての方々が山頂到着と同時に座り込んでいます。それに、ライトで足もと照らしながらマラソンなんて無理です。現実的ではありません。

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